おりびのブログ

「機械工or院卒→開発部」を目指す理系のためのブログ。

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【材料力学のせん断応力】ポンチで板を打ち抜く問題!許容せん断応力とは

この記事は、

◆材料力学が苦手で嫌い。

◆材料力学の演習でポンチでせん断する問題が出てきた。

◆せん断強さって何か分かんない。

という方向けの記事です。図解を使って丁寧に説明していきます。

20分ほどで理解できるよう、体系的にかつ3ステップに分けて説明しています。 ぜひ、材料力学のテスト勉強に役立ててください。      

ちなみに今回解説する問題は、教科書「改訂新版 図解でわかるはじめての材料力学」のp.30の演習問題2⃣です。            

材料力学 せん断応力

材料力学のせん断応力に関する問題

今回は↓のようなポンチによる板の打ち抜きの問題を解説します。

問題文は以下です。

以下の図のように厚さt=2㎜のアルミニウム板に直径d=10㎜の穴を打ち抜きたい。打ち抜きに必要な荷重Pを求めよ。ただし、アルミニウムのせん断強さを\tau_a =103MPaとする。

材料力学 せん断応力

そもそも、ポンチという工具のことを知っているでしょうか?

↓の写真のように、ペンのような形をしており、内側に空洞の穴が開いている工具のことです。

材料力学 せん断応力

この工具を切り抜きたい材料の上で構え、ハンマーで叩いて穴を打ち抜きます。

クッキーを作るときに生地を型で切り抜くのと同じですね!

材料力学 せん断応力

今回の問題では、クッキーの柔らかい生地のようではなく比較的固いアルミニウムを考えます。

問題を解き進めるにあたり気を付けるべきことは次の1点だけです。

◆せん断される断面積に要注意!

順を追って説明しますが、↑のことだけ注意しておけば恐らく正解できます。

それでは頑張って材料力学の勉強をしていきましょう。

材料力学のせん断応力の問題を解く3つのステップ

それでは、ピンの問題を解くための重要ステップを説明します。

重要ポイント ①せん断応力の定義式を思い出す(断面積に注意!)  

②「許容せん断応力<棒にかかるせん断応力」になるように式を立てる

③四捨五入に注意して答えを出す

この3つの手順に従って解説していきます。

材料力学の問題の解き方①:せん断応力の定義式を思い出す

まずは、せん断応力の定義式を思い出しましょう。

もし、せん断応力の公式があやふやな場合はまずこちらをチェックしてみてください。

せん断応力

\tau = \displaystyle \frac{F}{A}

\tau : せん断応力、F : 仮想断面に平行な内力、A : 断面積

でしたね。

今回の問題の場合、「仮想断面に平行な内力」というのは荷重Pですよね!これは簡単だと思います。

それでは今回の問題の場合、「断面積」はいくらになるでしょうか?

結論を先に言うと、A= (10×10^{-3}) × \pi ×(2×10^{-3}) が正解です。

なぜ断面積が↑のようになるか分かるでしょうか?

この断面積を考えるステップが、この問題で一番難しいので頑張っていきましょう。

アルミニウム板がくり抜かれる様子を図で表しました↓

材料力学 せん断応力

材料力学 せん断応力

くり抜かれる時にポンチとアルミニウム板のどの部分が触れているか考えましょう。

材料力学 せん断応力

くり抜かれるとき、ポンチとアルミニウム板の触れている部分は↑のオレンジ色の円形の部分ではありませんよ!

正解は、↓の図の青色の部分です。

材料力学 せん断応力

つまり、青色の部分の面積というのは、円柱の側面積を求めればいいので側面積A = 直径d×\pi × 高さtをすればOKです!

よって、ポンチにかかるせん断応力\tauは、

\tau = \displaystyle \frac{P}{(10×10^{-3}) × \pi ×(2×10^{-3})}

となります。

材料力学の問題の解き方②:「許容せん断応力<棒にかかるせん断応力」になるように式を立てる

ステップ①が理解できたら後は簡単です。

許容せん断応力<棒にかかるせん断応力」となるように式を立てましょう。

棒にかかるせん断応力の方が大きくなれば、アルミニウム板がせん断(くり抜かれる)というわけです。

ちなみに、今回の問題文では許容せん断応力という単語が出てきませんでした、が安心してください。

せん断強さ = 許容せん断応力\tau_aとなることを覚えておきましょう!

※allowable(許容の)の頭文字をとってaを添えています。

よって、

\tau_a \leqq \displaystyle \frac{P}{(10×10^{-3}) × \pi ×(2×10^{-3})}

式変形をし、Pについて解くと、

 P \geqq (103×10^6)×0.01 × \pi ×0.02

よって、

 P \geqq 6.471681×10^3

となりました。

続いて最終ステップです。

材料力学の問題の解き方③:四捨五入に注意して答えを出す

材料力学の答えの書き方の基本は有効数字3桁です。

つまり、大きい方の位から4つ目の数字を四捨五入なりするのが基本です。

しかし、今回の問題の答えは

 P \geqq 6.48×10^3

となります。

 P \geqq 6.47×10^3と答えると✖になります。理由は簡単で、

\tau = \displaystyle \frac{P}{(10×10^{-3}) × \pi ×(2×10^{-3})}の式のPP= 6.47×10^3 を代入すると

\tau =102.9732MPaとなり、厳密には\tau_a =103MPaを下回るため破断が起きないためです。

ですので、「許容」という単語が聞こえたら「四捨五入ではなく切り上げ」を行うと思っておきましょう。

これでだいたいは正解できます。

材料力学のせん断応力に関する問題まとめ

今回はポンチが登場するせん断応力の問題の解説を行いました。

もう一度大事なことをおさらいしておくと、

◆「断面積」は円柱の側面積

◆四捨五入ではなく切り上げ

この2つに注意しておきましょう。理解できたでしょうか?

また、材料力学の問題はたくさん解説しています。

不静定問題やはりの問題なども見てみたいという方はこちら!↓

また、解説してほしい材料力学の問題がありましたらのDMでご連絡ください。ありがとうございました。