おりびのブログ

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材料力学のピンと継ぎ手の応用問題を解説しました。【断面積の数に注意です】

前回、ピンと継ぎ手が登場する演習問題を解きました。まだご覧になっていない方はぜひに先にこちらから勉強してみてください。

今回はピンと継ぎ手の問題の少し応用問題を解こうと思います。

ちなみに今回解説する問題は、↓の教科書「改訂新版 図解でわかるはじめての材料力学」p.30の演習問題4⃣の応用です。

有光 隆【著】 技術評論社出版 おりびのブログで多数解説記事・動画アリ

 

 

材料力学 ピン,材料力学 引張り応力,材料力学 せん断応力

ピンと継ぎ手の応用問題

問題文は以下です。

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↑の図のように継ぎ手を用いて質量m=8000㎏の質量の物体を吊り上げる。棒の許容引張り応力\sigma_a =65MPa、ピンの許容せん断応力\tau_a = 50MPaとする。棒の Dおよびピンの直径dを求めよ。

問題の文章は前回の基礎編と全く同じです。

今回の応用問題は、前回の基礎編とどこが違うか分かったでしょうか?

問題図の通り、異なる部分は継ぎ手の形状ですね。

このように継ぎ手の形状が異なると何が変わるのか考えてみてください。

ピンの接合のイメージをしよう!

問題を解く上で最も大事なことは、なんといっても立体をイメージすることです。

起こっている現象のイメージをつかむことができれば60%ぐらい解けたようなものです。

しかし、今回の問題図は平面図なので、どうしてもイメージが掴みにくいと思います。

そこで今回も、3DCADで立体図を作製しました。ぜひご覧ください。

まずは、黄色の継ぎ手Yが登場します。(前回の基本編で登場した継ぎ手Yと同じです。)内側が空洞で、穴が2ヵ所ついています↓

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続いて四角の継ぎ手Rを用意します。継ぎ手Rにも穴が2ヵ所ついています↓

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そして次に、継ぎ手Yと継ぎ手Rをはめ込みます↓

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横から見るとこんな感じです!↓

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これに↓のようなピン(ただの丸棒)を突き刺しましょう!

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そして継ぎ手Yと継ぎ手Rを鉛直方向に引っ張る場合を考えていきます。

イメージはできたでしょうか?

続いて、実際に数式を使って問題を解いていきます。

材料力学のピンの問題を解く3つのステップ

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(前回の基本編と同じですが、まずはピンの問題を解く際の3ステップについてまとめます。

重要ポイント ①応力の定義式を思い出す(断面積に注意!)  

②「許容応力>棒にかかる応力」になるように式を立てる

③四捨五入に注意して答えを出す

この3つの手順に従って解説していきます。

まずは引張り応力について解こう!

物体は鉛直方向に引っ張られているので、軸径Dの棒には引張りの力が加わっていますね。

まずは軸径Dを求めましょう。

この棒にかかる引張り応力を\sigmaとすると、

\sigma = \displaystyle \frac{8000×9.81}{\pi D^2 /4}

となります。

分子は8000だけではなく、重力加速度9.81をかけることを忘れないでください。

次に、「許容応力>棒にかかる応力」になるように式を立てましょう。

許容応力はかかってもいい応力限界値、つまり応力のリミットだと思ってください。

なので、許容応力\sigma_aよりも実際に生じる応力\sigmaの方が大きくなるなんてことはあり得ません。

なので不等式を立てると、、、

\sigma_a > \displaystyle \frac{8000×9.81}{\pi D^2 /4}

これをDについて解くと、

D^2 > \displaystyle \frac{4 × 8000× 9.81}{\pi × 65 ×10^6} = 1.537290×10^{-3}

したがって両辺にルートを付けると、

D >39.208...[mm]

となります。

最終的な答えは小数第2位を四捨五入ではなく、少数第1位を切り上げをするということに気を付けると答えは、、、

D \geqq 39.3[mm]

なんで四捨五入ではなく切り上げなのか分からないという方は、ぜひ前回の基本編をチェックしてみてください。

せん断応力について解こう!

では続いて、今日のメインであるピンの軸径dを求めていきましょう。

基本的には引張り応力と変わりませんが、一カ所だけ引っ掛けポイントがあるので注意してください。

せん断応力を考える時は、どこの断面がちょん切れるかを考えることが大切です。もう一度↓の図をご覧ください。

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この黄色い継ぎ手を取ると、中身はどのようになっているでしょうか?想像してみてください。こんな感じですね↓

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では問題ですが、ちょん切れる断面はいくつあるでしょうか?

正解は4つです。

↓の図のように 材料力学 ピン,材料力学 引張り応力,材料力学 せん断応力

それでは、せん断される断面は4つということに気を付けて解いていきましょう。

(※ちなみに僕はこれと同じような問題が期末試験で出ましたが、断面を4個ではなく2個だと思って計算してしまい、結果的に材料力学の単位を落とした経験があります。皆さん注意してください。)

それでは内力とせん断される断面積を考えると、、、

◆内力:8000×9.81N

◆断面積:\displaystyle \frac{\pi d^2}{4}×4   m^2

よって、この棒にかかるせん断応力を\tauとすると、

\tau = \displaystyle \frac{8000×9.81}{4× \pi d^2 /4}

引張り応力の時もせん断応力の時も「許容応力>棒にかかる応力」という考え方は変わりません。

許容せん断応力を\tau_aとすると、以下の式になります。

\tau_a > \displaystyle \frac{8000×9.81}{4× \pi d^2 /4}

これをdについて解くと、

d^2 > \displaystyle \frac{4 × 8000× 9.81}{\pi × 4 × 50 ×10^6} = 4.996192×10^{-4}

したがって両辺にルートを付けると、

d >22.35216...[mm]

となります。

引張り応力の時と同じように四捨五入ではなく切り上げに注意すると、答え

d >22.4[mm]

です。

以上で計算は終了です。

材料力学のピンと継ぎ手の問題まとめ

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もう一度、ピンと継ぎ手の問題で気を付けることをまとめると、

◆力がかかる断面積に注意

◆許容応力が与えられた場合は「切り上げ」

この2つに要注意です。特に断面積が4つになることを平面図から読み取ることが難しいので何回も復習してください。

また材料力学を勉強する上でおすすめの参考書を2冊ご用意しました。

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また、解説してほしい材料力学の問題がありましたらのDMでご連絡ください。ありがとうございました。